消防士から転職やセカンドキャリアを考え始めた方の中には、「実際に消防士を退職した人ってどのくらいの人がいるんだろう?」そう思った方もいますよね。実は、「一生安泰」と言われた消防士の業界に、今、大きな異変が起きています。かつて東京消防庁の現場にいた私のもとにも、日々多くの現役消防士から切実な相談が届きます。
「将来が見えない…」
「自分の市場価値がわからない…」
「本当にやりたいことがわからない…」
事実、平成26年から令和6年までの11年間のデータを紐解くと、消防士の「普通退職(自己都合退職)」は、増加傾向にあります。しかし、勢いだけで転職を決めてしまい、後になって「消防士のままの方が良かった」と後悔する人が後を絶たないのもまた、厳しい現実です。
なぜ、ある人は理想のキャリアを掴み取り、ある人は転職を後悔してしまうのか。この記事では、最新の統計データに基づき、この11年で激変した消防士の退職実態を徹底解析し、「後悔しない転職」の正体を、元消防士の視点で詳しく解説していきます。
【11年間の推移】消防士の「普通退職」が急増している事実

消防士の退職者数は、平成26年から令和6年にかけて、常に右肩上がりの傾向が見受けられるのが事実です。総務省消防庁が公表している「地方公務員給与実態調査」のデータを、平成26年から令和6年までの11年間にわたって精査すると、驚くべき実態が見えてきます。
退職者総数の推移
まずは、平成26年から令和6年までの11年間における、全国の消防職員の「退職者総数」のデータを見てみましょう。ここには、組織の形そのものが変わろうとしている衝撃的な実態が隠されています。

平成26年〜令和6年の退職者数のまとめグラフ
グラフを比較すると一目瞭然ですが、10年前と今とでは退職の「理由」が全く異なります。かつては退職者の大半を「定年退職(グラフの青い部分)」が占めていましたが、現在では、「普通退職(グラフの赤い部分)」をする人が最も多い推移となっています。こちらについては、「1-4. 普通退職者の推移」で詳しく話していきますが、直近の令和5年・6年では、定年まで勤める人よりも、自らの意志で辞める「普通退職者」の数が圧倒的に上回るという事態が起きています。
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| 年度 | 退職者総数 | 定年退職 | 普通退職 | 勧奨退職 | 早期募集 | 分限処分 | 懲戒免職 | 失職 | 死亡退職 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| H26 | 6,159 | 4,353 | 855 | 487 | 135 | 200 | 28 | 1 | 100 |
| H27 | 6,566 | 4,150 | 1,835 | 311 | 127 | 1 | 29 | 4 | 109 |
| H28 | 5,559 | 3,838 | 1,177 | 254 | 142 | 2 | 40 | 2 | 104 |
| H29 | 4,684 | 3,062 | 966 | 235 | 124 | 141 | 34 | 11 | 111 |
| H30 | 5,105 | 3,253 | 1,356 | 223 | 132 | 1 | 43 | 4 | 93 |
| R01 | 5,028 | 3,274 | 1,328 | 199 | 98 | 1 | 34 | 5 | 89 |
| R02 | 4,855 | 3,154 | 1,303 | 186 | 101 | 2 | 26 | 6 | 77 |
| R03 | 4,738 | 2,781 | 1,573 | 184 | 92 | 0 | 24 | 2 | 82 |
| R04 | 5,269 | 2,811 | 1,967 | 237 | 138 | 2 | 33 | 2 | 79 |
| R05 | 3,681 | 13 | 2,954 | 426 | 148 | 2 | 34 | 3 | 101 |
| R06 | 5,153 | 1,543 | 2,915 | 429 | 132 | 2 | 46 | 1 | 85 |
また、こちらの表を見ていただくとわかるように、退職者総数は一時的に4000人台、令和5年には3000人台まで下がっていますが、普通退職者数が年々増加しているという逆行した推移も見られます。これは、定年退職まで続ける職員が減っているという事実が推測しやすくなっています。
ただし、令和5年で定年退職者数が13人になっているのは、おそらく総務省のデータが間違えている可能性が高いと考えています。本表はあくまでも総務省のデータを元にしていることを、あらかじめご了承ください。詳しくは、こちらのサイトから資料をご確認いただければと思います。
実は、僕自身も、「消防士としての定年退職」が見えなくなって、初めて転職やキャリアチェンジを意識し始めたんだよね
「辞めるのは自分だけではない」という客観的な事実

かつて、東京消防庁の消防士として現場にいた私の肌感覚としても、消防士を退職して新しいキャリアを歩んでいる人の数が増えたように感じています。その理由は、インスタグラムやXなどのSNSを通して退職について発信している方、セカンドキャリアでの発信をしている方が増えている姿を見ているからです。
しかし、ここで注意しなければならないことがあります。 これほど多くの人が動いているからといって、勢いだけで流されてしまうのは危険です。キャリアチェンジを通して、より良いキャリアになる方もいれば、後悔してしまっている方も少なくありません。後悔しないキャリア選択をするためには、「自己分析」だけではなく、「自己理解」を行い、適切な目的設定やゴール設定を行う必要があります。
- 「価値観」「才能」「感情」について自己理解すること
- 自己理解をもとに、「目的設定」「ゴール設定」をすること
- 方向性を明確にできてから転職活動に踏み出すこと
以下の記事では、「自己分析」と「自己理解」の違いについて解説していますので、キャリアチェンジで後悔したくない方は、併せてご覧ください。
消防署の中に転職やキャリアチェンジを考えている人がいなくても、実際には全国に同じような消防職員がたくさんいるんだね!
普通退職者の推移
先ほどのデータで「退職者総数」が増えていることを確認しましたが、ここからはさらに踏み込んで、普通退職者の増加について見ていきます。以下の画像をご覧いただくとお分かりの通り、普通退職者数は、年々右肩上がりの増加傾向にあります。

平成26年〜令和6年の普通退職者数のまとめグラフ
11年で普通退職者が「3.4倍」まで増加

平成26年時点では、全国でわずか802人だった消防士の普通退職者。 しかし、総務省の最新のデータでは2,744人にまで達しています。わずか11年余りで、自分の意志で消防を辞める人が約3.4倍にまで膨れ上がったのです。
この「3.4倍」という数字が意味するのは、単なる「若者の元気がない」「積極的な若者が少ない」といった精神論ではありません。「消防行政におけるキャリア形成の構造が、現代の働く人々の価値観や将来不安と、決定的にズレ始めている」という歪みの現れです。
今までの傾向から見ると、今後も退職者数は増える傾向にあると思うよ!
「普通退職」は特別なことではない

かつての消防署では、定年前に辞める人は「もったいない」「あいつは逃げた」「消防以外で通用しない」と後ろ指を指される雰囲気がありました。しかし、年間2,700人以上が辞めている今の時代、普通退職はもはや「特別な決断」ではなく、一つの「戦略的なキャリア選択」になっています。
また、これほど多くの現役消防士が、安定した身分と給料を捨ててまで外の世界へ踏み出しています。 このデータの裏側には、実際に働く現場での切実な危機感が隠されています。
- 「この組織に貢献しても、努力するだけ無駄だと感じてしまう」
- 「定年退職までの将来のビジョンが見えず不安になる」
- 「消防士以外の仕事で使えるスキルが身についていないことに気づく」
様々な理由がありますが、それだけ多くの人が自らのキャリア選択に悩みを抱えていることは事実だということがわかりますね。こちらの記事では、そんな消防士からのキャリアに悩む人の11の本質的課題について解説していますので、併せてご覧ください。
VUCA(予測不能な現代の環境)の時代だからこそ、危機感を持ち「自らを変える力」はとても重要なことだよね!
普通退職者の「年齢別人数」と「年齢別構成比」
消防士からの普通退職者は、全体の数が増えているだけでなく、その「中身」に目を向けると、さらに深刻な実態が浮かび上がってきます。かつての退職は、その多くが「定年退職」であり、若手の離職は稀なケースでした。しかし現在は、20代から30代という、現場の核となる世代の離職が止まらない状況にあります。

総務省 「地方公務員の退職者推移」より
平成26年〜令和6年の年齢別退職者数のまとめグラフ
また、このデータからわかることとして、60歳の普通退職者数が令和5年より急激な増加を遂げていることが見て取れます。これは、令和4年4月1日に総務省から発表された「地方公務員法の一部を改正する法律案の概要」という資料の中で、地方公務員の定年も60歳から65歳まで2年に1歳ずつ段階的に引き上げられるという内容と同時に、「当分の間、60歳を超える職員の給料月額は、60歳前の7割水準に設定する。」という給料の減少があることから、急激な増加傾向に転じたと推測することができます。
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| 年度 | 普通退職計 | 25歳未満 | 25-29歳 | 30-34歳 | 35-39歳 | 40-41歳 | 42-43歳 | 44-45歳 | 46-47歳 | 48-49歳 | 50歳 | 51歳 | 52歳 | 53歳 | 54歳 | 55歳 | 56歳 | 57歳 | 58歳 | 59歳 | 60歳 | 61-64歳 | 65歳以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| H26 | 802 | 249 | 218 | 59 | 36 | 21 | 14 | 11 | 11 | 8 | 6 | 9 | 6 | 4 | 9 | 7 | 22 | 18 | 27 | 45 | 19 | 3 | 0 |
| H27 | 1,043 | 268 | 269 | 112 | 89 | 34 | 24 | 20 | 24 | 20 | 14 | 13 | 2 | 4 | 9 | 8 | 11 | 23 | 25 | 19 | 48 | 15 | 13 |
| H28 | 906 | 311 | 248 | 95 | 49 | 20 | 20 | 15 | 16 | 8 | 6 | 3 | 3 | 3 | 11 | 9 | 6 | 13 | 19 | 35 | 12 | 4 | 0 |
| H29 | 905 | 283 | 251 | 105 | 44 | 15 | 26 | 12 | 17 | 17 | 8 | 5 | 4 | 7 | 8 | 10 | 13 | 12 | 19 | 30 | 12 | 7 | 0 |
| H30 | 1,108 | 359 | 340 | 123 | 53 | 22 | 22 | 23 | 13 | 21 | 5 | 6 | 6 | 6 | 7 | 11 | 14 | 14 | 23 | 26 | 8 | 6 | 0 |
| R01 | 1,272 | 435 | 397 | 150 | 59 | 20 | 17 | 26 | 15 | 25 | 9 | 2 | 10 | 60 | 8 | 4 | 12 | 9 | 19 | 29 | 10 | 8 | 2 |
| R02 | 1,172 | 408 | 362 | 131 | 70 | 13 | 23 | 17 | 21 | 17 | 6 | 1 | 7 | 2 | 8 | 3 | 10 | 12 | 17 | 24 | 6 | 8 | 6 |
| R03 | 1,436 | 431 | 462 | 211 | 93 | 21 | 26 | 20 | 25 | 28 | 10 | 5 | 8 | 7 | 3 | 5 | 6 | 9 | 25 | 19 | 4 | 12 | 6 |
| R04 | 1,841 | 492 | 582 | 271 | 185 | 40 | 21 | 27 | 32 | 41 | 15 | 10 | 14 | 6 | 12 | 12 | 9 | 15 | 15 | 26 | 8 | 3 | 5 |
| R05 | 2,719 | 482 | 515 | 326 | 174 | 47 | 35 | 20 | 33 | 43 | 18 | 10 | 18 | 11 | 15 | 14 | 16 | 16 | 23 | 22 | 840 | 23 | 8 |
| R06 | 2,744 | 443 | 611 | 320 | 218 | 49 | 35 | 33 | 39 | 41 | 18 | 19 | 17 | 12 | 9 | 23 | 15 | 17 | 13 | 31 | 716 | 54 | 11 |
以下の図は、平成26年〜令和6年までの消防職員の普通退職者数の総数、および年齢別の構成比を表した表になります。表の平成26年、平成27年では、30代半ばまでの消防職員の普通退職者が約60%程度をしめているのに対して、平成28年〜令和4年における30代半ばまでの消防職員の普通退職者では約75%となっています。
前述の通り、令和5年以降は給料制度の変更から、60歳の退職者数が激増しているので、50%ほどまで構成比としては減少しています。しかし、それでも約半数にあたる1,374人の若手消防職員、および中堅消防職員が退職をしている傾向が見て取れます。
20代・30代が組織を去る

上記のデータから読み取れるように、普通退職者数の年齢別推移の順位は次のようになっています。
- 60歳
- 25歳〜29歳
- 25歳以下
- 30歳〜34歳
- 35歳〜39歳
特に「20代の若手消防職員」「30代の中堅消防職員」での退職者が急増しています。現場のリーダー候補として期待され、知識も体力も備わった彼らがなぜ辞めていくのか。そこには共通した「消防士ならではの葛藤」があります。
- 新しいことに挑戦してみたいが、それは消防署の中にはない
- 人の命を救う仕事だからこそ、もやもやした気持ちで続けたくない
- 職場の人間関係が良くないからこそ、別の環境を戦略的に選択したい
そして、このような「動ける若手消防職員」「リーダーシップを活かせる中堅消防職員」が退職していくことで残された現場に甚大な影響を及ぼしてるのまた事実です。しかし、もしあなたが今、「自分と同じ世代がどんどん辞めていく」と感じているなら、それはあなたの職場だけの話ではなく、消防界全体で起きている「キャリア選択の変遷」の表れなのです。
また、消防士からの転職などのご相談について、ご相談者様の声やキャリアコーチングの受講者様の声を載せていますので、気になる方はぜひ一度ご覧いただき、気になった方は無料相談にもお申し込みください。
消防士からの転職だけに限らず、フリーランス、起業などのキャリア選択肢って、普通の時代に変わってきているんだよね!
なぜ、「消防士からのキャリアチェンジ」が進むのか?

ここまでの内容で、消防士の退職データより、若手・中堅層までの消防士が退職しているといった結果がわかりました。そして、東京消防庁の職員として勤務をしてきた私の肌感覚としても、5年前と今とでは、職員の「辞めることへの抵抗感」が全く違うなと感じています。その理由は、そして現在キャリアコーチとしてご相談を受ける中で見えてきた、「消防士が組織を離れる3つの本質的な理由」があるからです。
「安定」「目標」よりも「働く意味」が重要な時代になった

今の20代・30代の若手職員にとって、消防士になった頃は「救助隊員になるんだ!」「救急隊員になるんだ!」と大きな目標を掲げて頑張ってきた方も多いのではないかと思います。そして、公務員という「身分の安定」や「毎月の給料」がその上にあった。しかし、勤務年数が長くなるごとに、「安定」「高い目標」が人生を捧げる十分な理由にはならなくなってきているのです。
念願の職務に就けたとしても、その先の20年、30年をどう生きるのか。ルーティン化されやすい職場環境だからこそ、目標を達成した瞬間に、「自分はこのままでいいのか?」という「働く意味」への問いが始まります。単に生活をするということだけではなく、「仕事を通して何を実現したいのか?」という納得感のある人生をどう送るのか。そんな「心の充足」を求める層が、今、組織の外へと目を向け始めています。
- 「救助隊」「救急隊」という高い目標はあったが、「職務に就くことが目標だった人」
- ルーティン化した仕事の中で、「働く意味が見えなくなった人」
- 「安定した毎日」だからこそ、「本当にやりたいことがわからなくなった人」
こうした「心の飢え」が、安定した生活を捨ててでも、自分の存在意義を感じられる「別の世界へ挑戦したい!」と若手を突き動かしています。
実は、僕の同期の救助隊を降りてしまった友人も、同じような悩みを抱えていたよ!
時代に合わない職場の風土で、ストレスが増加する

民間企業では、時代に即した人材研修や組織内での制度を整備して、従業員のエンゲージメントを向上することによる、売り上げの向上や離職の防止を図っています。一方で、消防組織の内部はどうでしょうか?
- 形骸化した「根性論」や、目的の見えない「厳しい上下関係」
- 命を守るための「規律」とは無関係な、古い慣習の押し付け
- 曖昧な評価制度に伴う、年功序列の評価制度の文化
- 飲み会での2次会、3次会への「強制参加」および「長時間飲酒」
- 同じことをしなければならないという「同調圧力の強い職場環境」
これらは、昭和から2000年代初期までは古き良き文化とされてきましたが、Z世代・α世代と呼ばれる若手の消防士の一部の層では、「時代とのギャップ」に強いストレスを感じ、疲弊しているのが実態です。もちろん、こういった環境が生み出している良い側面もありますが、「このまま転職の賞味期限が切れてしまう前に、もっと自由でスピード感のある環境へ移りたい」と考えるのは、ある意味で健全なキャリア選択の生存本能と言えるかもしれません。
僕も、出勤日に朝7時には出勤して、賄いのお金を集金するだけの雑務がありましたが、これは正直いろんなストレスを作っていたような気もします!
ポジティブだからこそ、新しい挑戦の一環に「転職」がある

誤解してはいけないのは、辞めていく人たちの多くが「消防士という仕事が嫌いになった」わけではないということです。むしろ、「もっと自分を活かせる場所があるはずだ」「人生一度きり、新しい挑戦をしたい」という非常にポジティブなエネルギーを持っている人の方が多いのです。その理由は、キャリア選択に悩んでいたネガティブな理由から、より良い未来を作るためのポジティブな意味に変わっていくからです。
- 形骸化した「根性論」や、目的の見えない「厳しい上下関係」
→「もう少し柔軟な環境の中で、自分自身の力を試してみたい!」 - 命を守るための「規律」とは無関係な、古い慣習の押し付け
→「裁量権を持ちやすく、スピード感が早い環境で新しい挑戦をすることで、今まで以上に自分自身の可能性に挑戦してみたい!」 - 同じことをしなければならないという「同調圧力の強い職場環境」
→「同調圧力をかけられるのが嫌なのではなく、その同調圧力がもっと成長できる環境に変化させた方がより良いキャリアを歩めるかもしれない。」
特に、SNSの普及により、元消防士が民間企業でバリバリ活躍したり、起業したりする姿が可視化されるようになりました。
「転職は逃げではなく、キャリアのアップデートである」
「消防で培った規律や責任感は、ビジネスの世界でも強力な武器になる」
このように、公務員からの転職やキャリアチェンジを遂げた発信者の方の姿を見て、「脱落」ではなく「第二の人生のスタート」と捉える前向きな価値観が広がったことで、迷っていた背中が押される形となっています。
人間って、沈むからこそ、高く飛び上がることができるもんね!
退職者推移から読み解く、消防士からの転職で「後悔」する人

11年間で普通退職者が3.4倍に急増したというデータは、一見「誰でも辞められる時代」に見えます。しかし、ご相談を受ける中で見えてきたのは、「転職後に後悔をしてしまう」「何も変わらなかった」という厳しい現実です。急激な退職者の増加という事実の裏側で、後悔に飲み込まれてしまう人の共通点を整理しました。以下の5つのうち、1つでも当てはまる方は要注意です。
キャリア選択を「転職エージェント」に委ねてしまう

若手・中堅層までの消防士が転職を考えたとき、真っ先に登録するのが大手のリクルートやマイナビなどの「転職エージェント」ですよね。消防以外の世界を知らない不安、初めての転職を控える不安から、プロである彼らに「すべてをお任せ」したくなる気持ちは痛いほどよくわかります。
しかし、ここに最大の後悔の罠が潜んでいます。多くの転職エージェントにとって、ビジネスのゴールは「あなたが納得するキャリアを歩むこと」ではなく、「あなたを企業に入社させて、紹介料を得ること」です。
- あなたの本質的な価値観や「何のために働くのか」を深掘りすることなく、「元消防士なら内定が出やすい(=成約しやすい)」求人ばかりを提案されることがある。
- 「営業なら受かりやすい」「配送業なら適職かも」といった、表面的なスペックだけでマッチングが進んでしまうことがある。
- 「数うちゃ当たる」の方法で、数百件の職務経歴書を書かされる場合がある。
- 転職活動に長期間の時間をかけると、エージェントの担当者の仕事が雑になる場合がある。
- 「消防士」という仕事の特性を理解しきれておらず、職務経歴書や面接の言語化が甘くなる場合がある。
結果として、流されるように自分の価値観とは全く合わない企業へ入社することになり、数ヶ月で「消防士のほうがまだマシだった……」と後悔の念に駆られてしまいます。エージェントは転職の「手続き」のプロであっても、あなたの「人生の目的」を決めるプロではありません。自分の中に揺るぎない「軸」がないまま、他者にキャリアの舵取りを委ねてしまうことこそ、失敗への第一歩なのです。
エージェントの活用方法次第では、とても良い転職にすることも可能ではありますが、特に転職が初めてとなりやすい若手の消防士こそ、これらの点を注意しないと、後悔を招く危険性があることも理解しておくと良いでしょう。転職エージェントの活用方法については、以下の記事でもまとめていますので、合わせてご覧ください。
これは結構「転職エージェントあるある」で、僕もいくつかのエージェントを利用して相性の良い担当者を見つけたよ!
「我慢のしすぎ」による転職タイミングの喪失

退職者の推移では、30代の消防職員の退職傾向が強くなりつつありますが、実は責任感が強い消防士ほど、「あと1年、あと1年」、と耐え続けてしまいます。だからこそ、30代まで「我慢し続けてきた消防士」の転職者数が増加していることが推測できます。
消防士という職業柄、多くの職員が「一度始めたことは最後までやり抜く」「辛くても耐えるのが美徳」という高い責任感を持っています。しかし、キャリア形成においてはこの「美徳」が最大の足枷になることがあります。その理由は、不満や違和感を抱えながらも、「あと1年頑張れば希望部署に異動できるかも」「せめて30代になるまでは」と我慢を重ねているうちに、転職における「最高のタイミング」を逃してしまうからです。
- 30代半ばに入ると、20代の時よりもキャリアの選択肢が狭くなりがち
- AIの発達した現代では、未経験応募の職種が減っていく傾向にある
- 30代の転職活動では「ポテンシャル」より、「何ができるのか?」を重視される
転職の売り手市場がいつまで続くのか、転職エージェントの人でも読めないと言ってたから、迷いすぎるのも逆に損する可能性があるんだね!
優先順位が「採用条件」に寄りすぎている

20代〜30代の消防士では、結婚や住宅ローンなどのライフステージに入っている方も多いはず。しかし、20代〜30代の消防士の退職傾向が強くなっているということは、転職活動においても「年収」「年間休日数」「残業時間」「福利厚生」といった、目に見える数字や条件(What)ばかりに目が向きがちになります。もちろん、生活を守るために条件は大切。しかし、「条件さえ良ければ、転職しても良い」という思考で決めてしまうことには、極めて高いリスクが伴います。
- 「条件」は、仕事の「辛さ」を相殺できない
どれだけ年収が高く、休みが多くても、毎日「自分に合わない業務」や「価値観の合わない人間関係」の中に身を置く苦痛を消すことはできません。 - 消防士の時との「比較地獄 」
公務員である消防士の福利厚生や給与体系は、勤務先の自治体にもよりますが、東京消防庁の場合、民間企業の平均と比べても比較的高い水準にあります。そのため、条件(数字)だけで比較し始めると、「転職しなければ…」といった後悔につながりやすくなります。 - 「なぜ働くのか(Why)」の欠如
「土日が休みだから」「今より給料が50万円高いから」という理由は、転職のキッカケにはなりますが、「その会社で活躍し続ける理由」にはなりません。だからこそ、転職をしても何も変わらない人生を送ってしまいがちになります。
「何を得られるか(条件)」だけでなく、「自分はどんな環境で、誰のために、どう貢献したいのか(価値観)」ということの優先順位を上げることが、働く幸せに繋がるのです。この優先順位を間違えてしまうと、どれだけ内定をもらっても、仕事を通して心からの満足を得ることはできませんので注意してください。
転職をしたって、「収入が0円」になるわけではないので、「転職条件」と「価値観」の両立を図ることが大事だよ!
「一人で解決しなければならない」という思い込み

消防士は、現場での消防活動において「意思疎通はするが、自分で考えて行動しろ」ことを消防学校の時、そして若手消防士として拝命を受けてから徹底的に叩き込まれますよね。なぜならば、刻一刻と消防活動の現場では環境が変化するため、「自分自身の命を守る」「仲間の命を守る」という意味で、「自ら考えて行動すること」が重要になるからです。
- 現場活動における「自ら考えて行動すること」
- 周囲の状況を把握して、危険やリスクに「気づくこと」
このような「高い自律心」と「責任感」、「真面目」であること素晴らしいですが、転職活動という未知の領域においては、この一人で解決しようとする「自己完結」の精神が大きな障壁となる可能性が高くなります。
- 転職の「目的設定」で道に迷う
転職では、「どんな人のために、どんな課題を解決して、それをどんな企業やどんな人と一緒に、どんな社会を作っていくのか?」ということが重要です。しかし、考えたこともない人の場合には、その本音の部分を理解せずに転職してしまうため、後悔につながりやすくなります。 - 情報が選択肢を狭くする
転職市場では、情報をいかに早くキャッチアップできるかが1つの鍵になります。最新の情報を持つことで、人気の企業への選考申し込みができたり、市場の流れを掴みながら戦略を立てることができるからです。 - 「自己分析の迷子」に陥る
過去の経験をどう未来のキャリアに結びつけるかという「翻訳」の作業には、必ずと言っていいほど客観的な第三者の視点が必要です。なぜなら、選考を受ける企業の業務やポジションに合わせて表現することが転職攻略の1つの鍵になるからです。
確かに、一人で解決することが重要な場面もありますが、一人で考えて抱えすぎてしまった場合には、何も決まらずに転職のタイミングを逃してしまうということにつながります。最悪のケースでは、一人で抱え込んだ結果、定年退職までわからなくなってしまうこともあるのです。だからこそ、キャリア選択の軸となる「目的設定」「ゴール設定」といった部分から早めに明確にしていくためにも、一人で抱え込みすぎないことが意外と重要なのです。
一人で抱え込みすぎてしまうって、「消防士からの転職あるある」の1つだと思うよ!
戦略なき準備不足による「負のループ」

消防士からの転職活動において最も避けなければならないのが、一度ハマると抜け出せない「戦略なき準備不足による負のループ」です。これは、履歴書の書き方や面接対策といった「表面的なテクニック」だけで活動を始めてしまった人に共通して起こる現象です。戦略なき準備不足が、どのようにあなたを追い詰めていくのか。そのステップは以下の通りです。
- 「自分軸」の欠如による不採用の連続
「なぜ転職するのか」という根底が言語化できていないため、面接官の深掘りに答えられず、お見送りが続くことになり、疲弊するループに入ります。 - 「内定」が目的化することで、ジョブホッパーになる
本来の目的だった「働く意味」を忘れ、「よりよい条件」を探すようになります。その結果、短期離職によるジョブホッパーとなり、キャリアが壊れる可能性があります。 - 「家計簿」を確認しないことで思い込みのループになる
世帯持ち・独身であっても、現在の家計状況を把握しないので、やりたいことと年収などの条件を天秤にかけたときに、転職ができないという思い込みのループにハマります。
これこそが、データ上の「退職者数」が増えている裏で、「転職してもまたすぐに辞めてしまう人」「そもそも転職ができない」という負のループを生み出している正体です。多くの消防士は、現場での「準備」の重要性を誰よりも知っているはずです。しかし、自分のキャリア選択となると、それが見えなくなってしまうのです。
「なんとかなるだろう」という戦略なき転職は、転職市場においては致命傷
この負のループを断ち切る唯一の方法は、テクニックに走る前に、徹底的な「自己理解」そして「現状の把握」という名の事前の準備を行うことです。
家庭の収支管理は意外に多くの人がやってないから、無駄な場所にお金をかけている可能性もあるよ!
消防士の転職を「納得」に変えるデータ活用術

ここまで、消防士からの退職者が11年で3.4倍に増えたというデータを元にして、転職を通して後悔する人の特徴について話をしてきました。では、同じデータを”自分の年齢と照らし合わせた戦略”として読み解くとどうなるのか。この数字の裏側にある「変化」を味方につけるための、2つの視点についてお伝えします。
20代の増加は「チャンス」ではなく「焦り」の現れ

消防士の退職データから読み取れる、25歳以下の退職者が顕著に増えている事実は、裏を返せば「今の転職市場において、20代までの若手消防士がポテンシャルを活かして転職している」ことが推測できます。
- 消防士としての現場や職場の「ストレス耐性」
- 自ら意見を述べて、「上司を巻き込みながら」工夫してきた経験
- 何事にも「前向きに取り組める姿勢」
しかし、「今は仕事が余っているから、消防士ならどこかには入れるだろう」……もしあなたがそう思っているなら、その認識は今すぐ捨ててください。
最新の調査によると、実際に転職活動をしている人の約60%が感じている体感としては、現在は「買い手市場(企業が有利で選考が厳しい)」であると回答しています。また、約80%の人は、「企業が専門性の高いスキル」や「実績」を重視しているように感じたと調査結果が出ていました。人手不足と言われながらも、現場では「企業が人をシビアに選別する時代」に突入しているのです。
- 退職者が増えてライバルが多くなっていること
- 企業側は「より優秀な人材」を選んでいること
- AIに代替できる仕事が増え始めていること
特に、AI化が加速してる今だからこそ、このような転職市場になっていることが挙げられます。ただし、20代の場合には、「教育コストが低い」「素直さ」「長期で働いてくれる」ということを見越したポテンシャル転職はなくなっているわけではないので、早めにキャリア選択の軸を見つけて、選択肢の視野を広げることがおすすめです。
20代で「自分軸」と「企業のビジョン」を合わせた芯のある面接の回答ができると、大手企業でも内定は可能だよ!
30代の増加が証明する「転職の可能性」と「タイムリミット」

30代の消防士の退職者が増え続けている現在のデータは、「30代からでも異業種への転職は十分に可能である」という事実を証明しています。しかし、30代の場合には20代と違って、「ポテンシャル」よりも「経験」と「実績」が求められやすくなるからこそ、業界・業種未経験の消防士からの転職は難しいものとなりがちになります。
- 小隊長、中隊長といった役職での部下の「マネジメント経験」
- 消防署イベントの取り決め、新しい取り組みなどを推進してきた「実績」
- 消防士という仕事以外の場でも身につけてきた「スキルの経験値」
また、転職市場が買い手市場に感じていると最新の調査にも意見があったことからすると、20代の消防士よりもスピード感を持って転職に踏み込まなければ、転職できる希望職種の枠はどんどん減っていくことになるのです。だからこそ30代の消防士には、30代の戦い方が必要になります。
- 「キャリア選択の軸」を明確にすること(最重要)
- 転職エージェントなどを利用して、「最新の転職市場を理解」すること
- 「消防士として勤務を続ける」か「別のキャリアを歩む」か決断をすること
- 消防士の仕事とは別に、「専門的な知識や技術の習得」を行うこと
- 消防士の仕事では、「改革」を目指して仕事をすること
30代の消防士の場合には、「過去の経験」「今この瞬間の現状」「これから先の未来」を的確に把握して、採用選考を受ける企業の人たちの納得度を上げる必要性があります。だからこそ、今のうちから面接のネタを作り、戦える準備をしておくことが重要です。
もちろん、無理に転職をするというのは間違いですが、「いつか辞める」ではなく、「市場価値が最も高い今、納得のいく場所へ移る。」このタイミングの意識の差が、数年後のキャリアに決定的な違いを生みます。
「貫き通す頑固さ」を持っている人よりも、「柔軟性の高さ」がいろんな場面に響くよね!
結論:データから推測して、後悔しない人生を手に入れる

11年で3.4倍に増えた退職者数、そして8割以上が「選考が厳しくなった」と回答する2026年の転職市場。これらのデータが私たちに教えてくれるのは、「なんとなくの転職」が通用する時代は完全に終わりに近いということです。そう聞くと、「やっぱり自分には無理なんじゃないか」と不安を感じたかもしれません。しかし、厳しい現実を知った今だからこそ、あなたには「なんとなく動いて後悔する」という最大のリスクを回避できるチャンスがあります。
「自分」を言葉にする時間を持つ

転職エージェントは、簡単なヒアリングを行った上で「現状のあなたが受かりやすい求人」「経験を活かせるおすすめの求人」を教えてくれます。そして、企業は「自社が求めるスキル・経験」を提示します。しかし、「あなたがどう働くことが幸せになれるか」を教えてくれる人は、どこにもいません。
- 転職エージェントを利用すれば、「天職が見つかる」
- 「やる気がある人」なら、どこかの企業が採用してくれる
「天職」は、生き方に沿って自ら発見するものであり、「やる気がある人」を求めているのは前提条件の話です。だからこそ、自問自答するかのようにあなた自身が過去の記憶を掘り返して、あなた自身の「本当の価値」を言語化することが重要です。
- 言語化をする
消防士として命を守ってきたあなたの経験は、ソフトスキルに変換できます。また、あなた自身が経験してきた場面や、日頃の行動を行うことで「価値観」と「キャリアの方向性」を見つけることができます。 - ゴールを作る
言語化ができてきたら、「どんな人のために、どんな課題を解決して、それをどんな企業やどんな人と一緒に、どんな社会を作っていくのか?」ここを丁寧に結び合わせることで、キャリアにおけるゴール設定を行うことができます。 - 納得ができたら転職活動へ
このような「方向づけ」ができると、誇りを持っている消防士という肩書きを捨てて、次の新しいキャリアに踏み出す「納得感」を作ることができます。ここでようやく転職活動をスタートさせることで、転職における後悔をなくし、より良いキャリア選択が可能になるのです。
「準備8割」って消防業務だけじゃなくて、「キャリア選択」でも一緒!
一人で抱え込まず、パートナーを見つける

「一人で解決しなければならない」という消防士特有の思い込みは、キャリア選択をするまでの時間にロスを生み出すリスクがあります。だからこそ、消防士としての経験がある「パートナー」を見つけ、言語化できていないことを相談することがその時間的ロスを解消することにつながる可能性が高いです。
- 信頼できる「友人」「知り合い」「同僚」「恩師」
お互いのことをすでに知っているからこそ、相談することができる相手です。しかし、専門的な知識やあなたのゴールを引き出すための対話方法を知らないので、雑談で終わってしまう可能性もあります。 - キャリアコーチ
「キャリア選択の目的」「キャリアのゴール設定」を言語化し、あなた自身のポテンシャルを最大限引き出すことができる専門的な相談相手です。多少お金がかかるデメリットがありますが、あなたの中にある答えを引き出すための問い、気づき、行動を作るには最もプロフェッショナルな存在です。 - キャリアコンサルタント
「体系立ててキャリア選択の戦略を練る」といったことができる相談相手です。多少お金がかかるデメリットがありますが、分析系のワークやアドバイスも含めて、あなたにあった答えを教えるには最もプロフェッショナルな存在です。 - 転職エージェント(キャリアアドバイザー)
「あなたに合った職業を紹介する」といったことができるプロフェッショナルです。無料で利用することができる反面で、サービスの質にばらつきが出る可能性が高くなります。また、方向性を決めてくれる人ではありません。 - カウンセラー
「不安の解消や、現状の課題整理」をメインで行うことができる相談相手です。多少お金がかかるデメリットがありますが、話を聞いてもらいたい人にとっては最も効果的なコミュニケーションを取ることができるプロフェッショナルな存在です。
私が運営する『レスキャリ』は、単なるキャリアサポート事業ではありません。あなたと同じ消防の現場を知り、同じ葛藤を抱えてきた私たちだからこそ、「人生選択」という大きな枠組みからキャリア選択を捉え、あなたの消防人生の歩みを、民間企業に響く「武器」へと一緒に言語化していきます。
- 消防士の普通退職者は平成26年〜令和6年の11年間で約3.4倍に増加し、年間2,700人以上が自らの意志で退職している
- 退職者の中心は25歳〜34歳の若手・中堅層であり、「消防界全体のキャリア選択の変遷」として捉えるべき現象である
- 転職で後悔する人の共通点は「エージェント任せ」「条件優先」「一人で抱え込む」「準備不足」の4つである
- 転職市場は約60%が「買い手市場」と感じており、「なんとなく動けば受かる」という時代はすでに終わっている
- 後悔しない転職のためには、転職活動を始める前に「自己理解」と「キャリアのゴール設定」を行うことが最重要である







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